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第289話 

「私もわからないの」遠藤花は少し焦った様子の若子の声を聞き、「どうかしたの?何か用があって兄を探しているの?」と尋ねた。

「いや、大したことじゃないんだけど、彼が電話に出ないから、ちょっと心配になって……」

「そうなのね」遠藤花は目をぐるりと回して考えた。どうやら、若子は兄のことを結構気にかけているらしい。

「若子、それじゃあ私が兄に電話してみるわ。見つけられるか試してみるから、見つけたらすぐに連絡するわね。メッセージでもいい?」

若子は「わかった、待ってるわ。見つかったらすぐに知らせてね」と答えた。

「了解」

二人はそう言って電話を切った。

その後、遠藤花は兄の電話番号にかけてみたが、彼も電話に出なかった。

もしかして、今朝のことが原因で本当に怒って、わざと電話に出ないのだろうか?

遠藤花も少し心配になり、

兄のアシスタントに電話をかけた。

電話が繋がると、アシスタントは丁寧に応対した。「お嬢さん、何かご用でしょうか?」

「兄は会社にいるの?」

アシスタントは声を潜めて答えた。「お嬢さん、遠藤総は今、会社にいらっしゃいますが……」

「でも、何?」遠藤花は不審そうに尋ねた。「なんでそんなに小声なの?まるで何か隠してるみたいに」

「実は、遠藤総が今日まるで爆弾でも食べたかのように怒り狂っていて……本当に恐ろしいんです。もし何かあるなら後でご連絡します。今、遠藤総が私を待っているんですけど、遅れるときっと怒鳴られるので、本当に申し訳ありませんが、失礼させていただきます。もう怖くて……」

アシスタントは怯えた声でそう言い、急いで電話を切った。

遠藤花は、兄がまるで爆弾を食べたように怒っている理由が、ほとんど今朝の出来事のせいだと察していた。

まさか、兄もこんなに感情を抑えきれない時があるなんて。

もし松本若子が兄のこんな姿を見たら、きっと面白がるに違いない。

そうそう、こんな本音を出す兄の方が、よほど人間らしい。

遠藤花はいたずらっぽく目をキラリとさせ、若子に電話をかけた。

若子はずっと花の電話を待っていたので、すぐに通話に出た。

「もしもし、花、どう?彼に連絡取れた?」

花は言った。「兄の居場所はわかったんだけど、直接本人とは話してなくて、アシスタントを通じて確認したの」

「それで、彼はどうなの?無事だった?」若子は急い
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